1. 日本の農業が抱える課題と国家的目標

Q:なぜ今、下水汚泥の肥料利用が急務なのですか?

A:日本の肥料供給が「100%近い海外輸入依存」という極めて脆弱な構造にあるためです。

日本は尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムといった主要原料のほぼ全量を輸入に頼っています。近年の地政学的リスク(ウクライナ侵攻や輸出規制)による価格高騰は、食料安全保障上の大きな脅威となりました。国内で年間発生する下水汚泥(約230万トン)に含まれるリン(約5万トン)は、日本のリン輸入量の約1割に相当する貴重な「都市のリン鉱山」です 。

Q:政府が掲げる「2030年目標」とは何ですか?

A:2030年までに国内資源(堆肥・下水汚泥)の利用割合を40%まで拡大する目標です。

「食料安全保障強化政策大綱(2022年)」では、国内肥料資源の使用量を倍増させ、リンベースでの自給率を現在の約25%から40%へ引き上げることを目指しています 。

【表1:世界の肥料原料供給の現状(2020年)】

成分 主な生産国(シェア) 輸出の状況
窒素 (N) 中国(約2割) ロシアが世界1位の輸出国
リン (P) 中国(約2割) 中国が輸出の約2割を占める
カリ (K) カナダ(2割超) カナダ・ロシア・ベラルーシの3カ国で輸出の8割

2. 科学的根拠に基づく「安全性」と「品質」

Q:重金属(カドミウム・鉛など)の蓄積が心配ですが?

A:30年来の排出源対策と、厳しい「公定規格」により安全性が確保されています。

かつては工場排水の影響が懸念されましたが、メッキ工場等への規制と税制優遇により、現在の下水汚泥中の重金属含有率は大幅に低下しています 。

Q:PFASやマイクロプラスチックへの対策はどうなっていますか?

A:PFASの一種であるPFOS及びPFOAは、有害性が指摘されており、科学的議論の結果、国際条約において廃絶対象とされて、日本においても製造・輸入等が禁止されました。

一方、PFOS及びPFOAは、過去に幅広い用途で使用されてきたため、河川・地下水等の水環境中で検出される事例が確認されており、下水処理においても同様で、処理工程で下水汚泥に移行することが分かっています。