私たちは、肥料の三要素の一つである「リン」の原料を、100%海外からの輸入に依存しています。中国やモロッコなど特定の国々の情勢変化や、円安の波に翻弄され、肥料価格が高騰するたびに農家の経営は揺らぎます。
しかし、私たちの足元には、使われるのを待っている「宝の山」があります。
それが、下水汚泥です。
日本国内で発生する下水汚泥に含まれるリンの総量は、約5万トンP/年。化学肥料として使われるリンの約4〜5割、 畜産飼料として使われるリンの約3割前後に匹敵します。まさに「準国産資源」です。
にもかかわらず、現在その肥料利用は極めて限定的です。全国にある約2,200の下水処理場では、肥料として活用できる高品質の汚泥が日々発生しています。しかし、そのほとんどは肥料として活かされることなく、多額の税金を産廃業者に支払って、焼却し、埋め立てやセメントへ混ぜ込むといった廃棄物処分が行われています。
「資源がない」のではありません。「あるのに金を払って捨てている」のです。
技術的な安全性は、すでに確立されています。重金属等の基準は法律で厳格に管理され、科学的な根拠に基づき安全利用が可能です。
なぜ、この「宝の山」を捨て続けてきたのか。 それは、下水汚泥の活用を「汚泥を処理しなければならない下水道セクター」だけの課題として押し付け、肥料を使う側である「農業セクター」が、自らの生存に関わる資源の問題として正面から向き合ってこなかったからです。
これまで行政も農業者も、下水という言葉への漠然とした忌避感や、重金属の存在など既に技術的に回避が可能な根拠のない噂を鵜呑みにし、課題を「あちら側」へ追いやってきました。科学的な安全性は証明され、手厚い研究が積み重なっているにもかかわらず、です。
下水汚泥の管轄は国土交通省、肥料の管轄は農林水産省。この縦割り行政の谷間に情報が埋もれ、「どこで手に入るのか」「誰に頼めばいいのか」という現場の声に応えるプラットフォームが存在しませんでした。
だから、私たちが作りました。
このポータルサイトは、公共事業ではありません。危機感と使命感を持った関係者が集まり、手弁当で、作り上げたものです。
私たちは、国交省と農水省、それぞれの省庁に散らばっていたデータを執念深く拾い集め、統合しました。
全国の処理場の位置、成分データ、問い合わせ先。
ここには、下水汚泥肥料の入手に関して、現時点で日本で最も詳しく、最も実用的な情報が網羅されています。
いま、私たちに求められているのは、「実現困難だが意義のある課題」に正面から向き合うための、知恵と勇気です。下水汚泥の肥料利用は、技術的には決して難しくありません。利用率がわずか10%上がるだけで、日本の食料安全保障には計り知れないインパクトをもたらします。
持続可能な日本の農業を始めましょう。
下水汚泥肥料ポータル 運営チーム 代表 久松達央